EP - Live From The Jungleイーピー・ライヴ・フロム・ザ・ジャングル

EP - Live From The Jungle

Release:
1988年5月

Label:
Geffen Records

Format:
LP, Cassette Tape, CD


日本編集によるミニ・アルバム。後に契約上の理由から生産中止になっているため、コレクターズアイテムとなっている。#2、#5など正規盤アルバムに収録されていない曲が聞ける。#5はAC/DCのカバー。#1~#5までがライヴ音源という記載だが、実際には#1、4、5が1987年6月28日のロンドン・マーキーでの音源。#2、3がスタジオテイクに歓声を入れた疑似ライヴ音源、#6がアルバムと同じテイク、という構成のようだ。
Guns N' Roses

Produced by Mike Clink and Guns N' Roses and Vic Maile
Single Cut

Videos

廃盤となっている本盤の貴重なライナー

「シャワーもなくて、すえたニオイのするウナギの寝床みたいな細長い部屋に5人で住んでたんだ。ボロボロだったのを、アクセルが材木(ツー・バイ・フォー)かっぱらってきて直したのさ。 パーティやってね、アパートのまわりやパーキングを裸の女の子がキャーキャー駆け回ってるっていうの、よくあった。あと、サンセットをウロついておのぼりさんの女の子引っかけてきてさ…。 強姦罪? なんだよ、それ。起訴は取り下げられたんだぜ。しばらくは監視がキツくなって、みんなコソコソ暮らしてたけど(笑)」
そんな”ハリウッド・プレイス”での生活が、ガンズ・アンド・ローゼズの歌を生々しいものにしたのだろうか。大都市LAのダークサイドが、アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』には見事に描き出されている。 あの街のニオイや空気のみならず、そこに渦巻く狂気や渇望までが、研ぎ澄まされたリアリティを持って迫ってくる。”LAメタル”という看板のチャラチャラしたイメージをズタズタに切り裂くような、超ド級の破壊力を持つロックンロールなのだが、これほど今のLAを感じさせてしまう音も珍しいと思う。 彼らのロックには、今、この瞬間の、生きている世界が脈打っている。だから熱い。

多くの偉大なバンドがそうだったように、ガンズ・アンド・ローゼズはこの時代を呼吸し、世界を映すバンド、ということなのだろう。しかし、それだけではない。彼らの音楽の本質的な激しさは、 この時代の、この世界の中にあってあがきながらも、全力で駆け、向こう側に突き抜けようとする、燃えたぎる意思からくる、と言い切ってしまいたい。
彼らはダーティでミーンでナスティなことを誇りにこそすれ、恥じたり臆したりする連中ではない。かといって、この薄汚れた現実の不条理に気がつかない愚鈍でも鉄面皮でもない。 それこそ地を這うような生活をしていながら、迷い。いらだち、問い続け、叫びを上げる。彼らが若くて、適当に自分と折り合う、自分の渇望を飼いならすということを知らないからだ。 ほとんど最低の現実の中で、光を求めて彼らは性急に駆け、鋭い刃物を突きつける。時代に風穴を開けようとして。聞き手の背筋をゾクゾク戦慄させるのは、ガンズ・アンド・ローゼズが持っている、そんな狂おしいばかりの意思なのだ。

と、去年の11月、アラバマ州バーミンガムで彼らのステージを見て、私は確信した。モトリー・クルーの前座だったから、演出も照明もないようなものと言っていい。しかし、その素っ気ないライトに照らし出されたのは、1ステージを一気に駆け抜け、渦巻く思いを果たしてしまおうとするような、ムキ出しの意思の塊だった。 一曲目の「イッツ・ソー・イージー」で空気はバリバリに張りつめてしまう。低く身構えて今にも襲いかかってくるような攻撃的な緊張感が、ステージから会場全体を包む。ひとつひとつの楽器から叩き出される音は、暗い闇を切りつけ、切り裂き、怒涛のようなうねりとなって、激しく押し寄せてくる。腕自慢大会風のギター・ソロがあるわけでも、お決まりの見せ場があるわけでもない。 単なる音の激しさでも音量の大きさでもない。こうまで人の心を掻き乱し、のめり込ませるロックンロールのすさまじさというのは、全身全霊がこめられているから、という以外、なんと説明したらいいのだろう。

なわけで、5曲入りの45回転ライヴの音をもらった私は、ちょっと困っている。生肉が一番オイシイと知っている犬は大喜びで駆け出して行くわけだが、「ケッ、こんなちいせえの!?」という不満は隠せない。 なんたって、一曲目の「イッツ・ソー・イージー」で空気がバリバリになったはいいが、もういきなり佳境で、ラストまで息もつかさずまっしぐらである。やっぱり、せっかく日本のみのオリジナル企画なんだから、ドドーンと怒涛の2枚組ぐらいはやって欲しかった。なんなら私がウォークマンで録ったアラバマ・ライヴを提供しても良かったのに(あ、こりゃマズいか…)。 この1枚で彼らのライヴの真髄に触れられるかどうかは聞き手の努力次第(?)だが、とにかくレア・アイテムだということで、有難がって聞かなくてはなるまい。録音はもうじき涙々の店閉いが決まっているロンドンのマーキー。去年の6月のライヴじゃないかな。無修正で、彼らの実力もバッチリチェック。

まずは身体を低くかがめ、スケートの要領で右へ左へと順に上体をスライドさせる”アクセル踊り”を習得して、1曲目からノリまくろう(知ってる歌だしな)。次の2曲は本邦未発表オリジナル。スピーディにたたみかける2曲目に続いて、ななんとブラスをフィーチャーした3曲目。こういうシャレたことをやってみたりするんだねと蒼ざめの一曲だ。後半いって、12インチ「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」のB面にも収録された「天国の扉」はいわずと知れたボブ・ディランの曲。このへんの音楽的素養の広さが大器の証明だ。 スラッシュのギターが気ばりまくってる! ラストはAC/DCの名曲。今は亡き、ボン・スコットをほうつさせる下品な歌い出しがたまらない。しかし、「アンガス!」という掛け声はロンドンのガキの単細胞ぶりが表れているようで悲しい。ま、演奏の方がメチャカッコいいので許すけど。
などと文句を言いながら、結局たったの5曲でもしっかり引き込まれてしまうという彼らの吸引力はたいしたもの。念願の来日公演が実現するまでは、これでジッと我慢の子だ。

ガンズ・アンド・ローゼズは過去・現在のあらゆる素晴らしいバンドと比較され語られるだろう。しかし、今、ここに必要なのは彼らだけでいい。世紀末の混迷の中を私たちと一緒に駆け抜けようという、気迫を持った連中が彼らをおいてどこにいるというのだ。【解説:沼崎淳子】