元ガンズのスラッシュが語るギター、プロツールス、メタル入門/ロックンロール入門の3枚

AMP 2014.10 By Kenta Terunuma.

元ガンズ・アンド・ローゼズのギタリストにして、活動休止中のヴェルヴェット・リヴォルヴァーでの活動でも知られるスラッシュの新作『ワールド・オン・ファイアー』がリリースされた。明確にガンズ・アンド・ローゼズを意図したであろう楽曲も多数盛り込まれた全17曲。往年のファンも、HR/HM好きも、時代錯誤的な(←褒め言葉)アッパーなギターロックを求めるキッズも、必ず気に入る楽曲があるはずだ。そんな新作の話を中心に、この30年余りのロックの歴史、そしてキッズへのおすすめディスクをインタビューした。

■新作『ワールド・オン・ファイアー~デラックス・エディション』のレコーディングドキュメンタリーを観て、プロツールスではなくテープでレコーディングされていたのが印象的です。テープを選んだのはなぜですか?
俺はこれまでずっとテープを使ってきていて、俺のいたバンドでテープを使っていなかったのはヴェルヴェット・リヴォルヴァーだけだね。どうにもそれがそれが気に入らなかったよ。特にロックンロールやブルースやジャズといった音楽においては、ドラムとギターは絶対にアナログのほうが音が良い。それにプロツールスだと修正が簡単すぎるから、エンジニアが勝手にちょこちょこと直したりするんだよ。

■レコーディング期間はどれくらいでしたか?
ベーシックトラックは2〜3週間程度。ボーカルとギターのオーバーダブは1ヶ月だね。

■全17曲というボリュームある作品ですが、最初からそうした作品を作りたいと思っていたのでしょうか。
17曲持ってスタジオ入りしたんだけど全部良かったから1曲も削らなかった。前作は20曲くらいあったけど、本編は13曲。ボーナストラック用に残りを入れたりしたんだけど、どれも良い曲なのにボーナストラックやB面曲だと劣るような印象になるのが嫌だったんだ。

■ギターの音が生々しく、かつ素晴らしいトーンで鳴っているレコードだと思います。何か特殊なレコーディング・テクニックを使ったのでしょうか?
今回はインキュバスなんかを手がけているマイケル”エルビス”バスケットと一緒にやったんだけど、俺からはエルビスに対して「アンプから出た音をそのまま録音してくれ」と話したんだ。俺のギターのセットアップは単純なんだけど、普通のレコーディングでは最終的にモニターから聞こえてくる音が、アンプから出ている音とは何か違うんだ。だから、そこを徹底してくれと頼んだ。そこがポイントかな。

■アンプシミュレーターは使用していないのですか?
俺の耳からするとアンプシミュレーターの音はホンモノのアンプから出る音とは違うよ。とにかく本物のギターとアンプから出る音が好きなんだ。

■レコーディングに使用したギターについて教えてください。
メインで使ったのは2本。ガンズ『アペタイト・フォー・ディストラクション』のときから使ってるレスポール。それから57年モデルのリイシュー版のレスポール。ゴールドトップのやつだ。ソロもコレで弾いたよ。あとはリズム・ギターでES-175、ES-135、レスポールJrのリイシュー、アコギもマーチンを含めて何本か。それからSGの12弦モデルも使ったね。

■アンプは?
メインはマーシャルのJCM-800と、LAでレンタルしたとても古いモデルのマーシャルだ。ES-135やES-175はマーシャルのヘッドと、メサブギーやハイワットのスピーカーを組み合わせて使った。

■ドキュメンタリーではモーターヘッドのTシャツを着ていましたが、レコーディング時の服装にはこだわりがありますか?
実はあれはモーターヘッドのパロディーのTシャツなんだよ(笑)全然こだわりはなくてその辺にある服を着ていくよ。

■今ここまでストレートなロックンロールはめずらしく感じました。ガンズ・アンド・ローゼズのデビュー以来、グランジやミクスチャー、ポップパンク、ヘヴィーロック、ザ・ストロークスのようなレトロモダンまで、ロックはさまざまな姿を見せてきました。この約30年のロックの変化を見て、あなたはどう感じていますか?
90年代はじめに出てきたアリス・イン・チェインズとサウンドガーデンが大好きだったな。ニルヴァーナやパール・ジャムも好きだったけど、最初の2バンドが圧倒的に好きだった。ただ、そんなに人気は長続きしなかったね。その後出てきたバンドだとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだな。最高のライブバンドだよ。あとはパンクでL7も好きだった。それからナイン・インチ・ネイルズは俺が唯一良いと思うテクノグループだね。
ただ、90年代後半から2000年代にかけて音楽はつまらなくなってきたと思う。アイデアが欠落しただけじゃなく、業界の問題も多いだろうけどね。レコード会社も、そしてアーティスト側も、商業的成功を目指しすぎているんだよ。
でも、そういった業界の移り変わりがあったなかで、唯一変わらず存在していたのがヘヴィーメタルだな。水面下の音楽ではあるけど、着実に進化していっているね。そういったところも含めて好きな音楽だよ。

■ではキッズがヘヴィーメタルを聴き始める時に手にすべき3枚のレコードを教えてもらえますか?
・ブラック・サバス『ブラック・サバス』
・メタリカ『マスター・オブ・パペッツ』か『ライド・ザ・ライトニング』
・ジューダス・プリースト『スクリーミング・フォー・ヴェンジェンス』
スレイヤーの『レイン・イン・ブラッド』も捨てがたいんだけどね(笑)

■同じように、EDMに夢中みたいなキッズがロックンロールを聴くときに3枚渡すなら?
クソっ、どうしようかな(笑)
・AC/DC『ハイウェイ・トゥ・ヘル』か『バック・イン・ブラック』
・ガンズ・アンド・ローゼズ『アペタイト・フォー・ディストラクション』
・モーターヘッド『エース・オブ・スペーズ』
ってとこだね。