グリーン・デイのビリーによる、ガンズ・アンド・ローゼズの“ロックの殿堂入り”紹介スピーチ全文

uDiscoverMusicJP 2022.11

ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)の『Use Your Illusion』デラックス盤が2022年11月11日に発売されたことを記念して、2012年にバンドがロックの殿堂入りした際にグリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングが披露した紹介スピーチを掲載。

「きっと早死にするか、それとも刑務所に入るだろう」
俺の名前はビリー・ジョー。こちらがマイク、そしてこちらがトレ・クールだ。俺たちはガンズ・アンド・ローゼズをロックの殿堂に迎え入れるためにこの場にいる。MTVで初めてガンズ・アンド・ローゼズを見たとき、俺は思った。「こいつらのうち一人はきっと早死にするか、それとも刑務所に入るだろう」って。

「Welcome To The Jungle」の冒頭のリフを聴くと、まるでロサンゼルスの地下世界に潜っていくような感覚に陥る。その旅路の先には、パーティーがあるわけでも、魅惑的な世界があるわけでも、パワー・バラードがあるわけでもない。そこは、脱落した連中や薬物中毒、誇大妄想、セックス、暴力、愛、怒り、ハリウッドの闇なんかが蔓延する見苦しい地下世界だった。

それでも俺の耳には、それがとても新鮮に聴こえた。言うまでもなく、俺はそのあとすぐに彼らのアルバムを買った。『Appetite For Destruction』は、ロックンロールの歴史にあって、最高のデビュー・アルバムだ。ほかの誰かの作品を思い浮かべる人もいるかもしれないけれども、今夜その栄冠に相応しいのは、ガンズ・アンド・ローゼズしかいないだろう。

あのアルバムは、どの曲を聴いても、感情を芯から揺さぶる。「Welcome To The Jungle」「It’s So Easy」「Nightrain」「Out To Get Me」「Mr. Brownstone」「Paradise City」「My Michelle」「Think About You」「Sweet Child O’ Mine」「You’re Crazy」「Anything Goes」「Rocket Queen」。息つく暇もなく押し寄せてくる楽曲群は、ロサンゼルスの見苦しい地下世界へと聴く者を誘ってくれた。

(彼らは)汗にまみれた窮屈なところで腕を磨き、ピザの空箱やバーのナプキンに曲をしたため、タダ酒と寝床を探し求める日々を過ごしていた。それもこれも、喧しいロックンロールを演奏するためだ。彼らはロックンロールが大好きだから耐え抜くことができた。彼らには他のどんなバンドにも劣らない根性と真心、そして情熱があった。何より、重要なことは、彼らが嘘偽りなく、自分たちを取り巻く不条理な世界をありのままに描いたということだ。

俺はパワー・バラードを毛嫌いしていたし、ディスコで流れるような軟派なパーティー・アンセムも大嫌いだった。駆け出しのミュージシャンだった俺は、もっと意味のある何かを求めていた。『Appetite For Destruction』にはその何かがあった。結局のところ彼らは最もビッグで最高のロック・バンドになったわけだけれども、それをたった1枚のアルバムで成し遂げたんだ。

『GN’R Lies』とユーモア
その後、ガンズ・アンド・ローゼズは『GN’R Lies』をリリースした。半分はライヴ音源、半分はアコースティック・ナンバーっていうアルバムだ。ほとんどの人は、アコースティック・アルバムにはロック・ミュージシャンの繊細な側面が表れると思っているだろう。

(笑いながら)ところが彼らのそれは違っていた。ともあれあのアルバムで、彼らにはどんなときでも過激さを失わないアウトローっていうイメージが定着した。(ここで観客の一人が「Used To Love Her」の歌詞の“I used to love her / 彼女を愛していたけれど”という一節を叫び、ビリー・ジョーがこれに“but I had to kill her ! / それでも殺さなきゃならなかったんだ!”と応える)

「Patience」っていう曲は、愛と不安感を歌った不朽のバラードだ。あの歌の主人公は、まるで20階建てのビルの屋上から飛び降りる寸前の自分自身を説き伏せようとしている。彼らの作品にはユーモアが込められた曲もある。たとえば、「I used to love her… / 彼女を愛していたけれど」、(観客が一斉に)「”but I had to kill her ! / それでも殺さなきゃならなかったんだ ! 」。

これがユーモアだなんて理解できる人がいるだろうか。けれどもジョークには真実が含まれているって言うだろう?

そして「One In A Million」、あの曲は災いの種になった。大雑把に言えば、多様な人たちが暮らす見知らぬ街にやってきた、無知な農家の少年の物語ということになるけれども……俺からはそれ以上言わないでおこう……。(*編註「One In A Million」はNワードの使用や同性愛嫌悪であると非難された)

『Use Your Illusion』は多種多様なロック・アンセム
そのあと、彼らは、1枚ではなく2枚のアルバムを一度にリリースした。『Use Your Illusion I』と『Use Your Illusion II』だ。

あの2作がリリースされると、ガンズの新しい音楽をいちはやく聴きたいファンたちは文字通りレコード店に押し寄せた。あの2枚のアルバムには、「Right Next Door To Hell」や「You Could Be Mine」みたいな曲から「November Rain」や「Don’t Cry」のような壮大なピアノ・バラード、そして連続殺人鬼にしか理解できないような未知の世界に聴き手を誘う楽曲まで、多種多様なロック・アンセムが収められていた。

同じころ、世界的なバンドとしての彼らの存在感はいっそう大きくなっていった。コンサート・ツアーではアリーナやスタジアムを回り、華やかなプロモーション・ビデオに巨額の予算を注ぎ込み、誰もが知っているさまざまな厄介な出来事、激しい怒号、崩壊、そして論争の的になっていった。彼らはいくつもの国で演奏したけれども、ダフによれば滞在した記憶すらない場所もあるらしい。だがそれもこれも、偉大なロック・バンドの証と言っていいと思う。

各メンバーへの言葉
スティーヴン・アドラー、『Appetite For Destruction』であなたが披露したドラミングは完璧だった。ハード・ロックの力強さとすばらしいグルーヴ感が完璧に融合していた。本当に信じられない、最高だ。

マット・ソーラム、あなたはそんな彼のポジションをスムーズに引き継ぎ、グループに新たな強みをもたらした……。(少し間を空けて)たとえばどんなものか……あなたがもたらしたもの、それは新たなエネルギーとパワーだ。あなたの最初のライヴはロック・イン・リオ……本当にあなたはこのバンドにうってつけだった!

ディジー・リード、あなたの魅力は何より巧みなキーボード・プレイだ。その調子で頑張ってほしい。(ビリー・ジョーが親指を立ててみせる)

ダフ・マッケイガン、シアトルからやって来たパンク・ロック少年。あなたはジョニー・サンダースのベーシスト版って感じだ。特に「Sweet Child O’ Mine」のベース・ラインは、口ずさめるほどにすばらしい。(会場の)あっちにはすてきな家族もいらっしゃっている。きっとみんなあなたのことを誇らしく思っているだろう。そういえば、あなたはザ・ファーツ(訳注:オナラの意)っていうバンドを組んでいたっけね。

イジー・ストラドリン、今あなたがどこにいるのか、俺にはわからないけど(会場には不在)、この言葉が届いていたらいいと思っている。今ごろエジプトでRV車でも走らせているのかな? あなたはロックンロール界のマイルス・デイヴィスのような存在だ。ギターをプレイし、スラッシュとの絡みをみせるあなたはいつだって自然体だった。あなたにはまるでロニー・ウッドのような魅力がある。そう断言しておこう。

ギルビー・クラーク、あなたを心から敬愛している。いったいどこにいるのかな?(大勢の人たちの中からクラークを探し出そうと見渡す)

スラッシュ、ロサンゼルスのギター野郎たちがみんなエディ・ヴァン・ヘイレンに追随していく中、あなたはまったく違うアプローチを取ってみせた。あなたはエリック・クラプトンとジミー・ペイジとジョー・ペリーの優れた点を選び出し、あなた自身の時代に合ったプレイに落とし込んだんだ。あなたのリード・ギターやリフは聴けばすぐにそれとわかる。なぜって、あなたそのものだからだ。あなたの演奏からは、あなたの心や魂が感じ取れるんだ。ギターとシルクハットがなければ、ただの変な人なんだけど。

欠席したアクセルへのメッセージ
俺たちは、そもそもはここでガンズ・アンド・ローゼズの曲を演奏してほしいと依頼されていたんだ。13歳になる俺の息子は、YouTubeでギターを学んでいる。彼はストロークスの曲みたいなプレイが得意でどんどん上達しているところだ。だから演奏の依頼があったとき、俺は「息子にできているくらいだから、俺も“Paradise City”のギター・プレイをYouTubeで習得できるだろう」と思った。

そしてYouTubeで、12歳の少年が「Paradise City」を弾いている動画を見つけた。その少年は、俺には一生かけても追いつけないほどギターがうまかった。それで俺はこんな風に思ったんだ。「なあ、俺たちが演奏するなんてやめておこうじゃないか…。俺たちに務まるわけがない。絶対に無理だ」ってね。

13歳の息子の前でバツの悪い思いをさせてくれて本当にありがとう、スラッシュ!それと、誰か忘れているかな?(アクセル・ローズが欠席しているため、観客たちがブーイングを始める)。

ダメだよ、静かに、静かにしてくれよ!この男は最高にイカしたシンガーなんだからさ。史上最高のフロントマンのひとりだって言ってもいいだろう。あなたの書く歌詞には真心や情熱、怒りが込められている。そしてどんな代償を背負うことになろうとも、あなたはためらうことなく真実を語ってきた。

歌声の幅も広い。静かに囁くように歌うことも、パワフルに歌ってみせることも、甲高く叫ぶように歌うことだってできるんだから。(“You’re Crazy”の歌詞を引用して)「あんたはまったくクレイジーだ (you’re f–king crazy)」。だけど聞いてくれよ。シンガーなんてクレイジーな人間がほとんどなんだ。この俺が言うんだから間違いないだろう? でも、バンドを続けるっていうことはすごく厄介なことなんだ。人生の中で、いくつもの時代やステージをくぐり抜けていかなきゃいけないんだから。

一度の人生でいくつもの時代やステージを経験する人なんてそんなにいるものじゃない。ほとんどの人は何気なくテレビを眺めながら暮らして、同じことの繰り返しで一生を終えるものだろう? だけどバンドをやっていれば、人生における時代やステージをアルバムに刻んでいくことができる。自分だけの作品を生み出すことができるんだ。そのとき自分が経験していることを言葉にすれば、それがそのまま歌になるんだ。

そうして人生の1ページが刻まれていく。この曲を書いたとき、自分はどこにいたかとか、どこでレコーディングしたかとか、いつライヴで初めて披露したっけとか、それって人生そのものだろう。俺たちの人生だってそうなんだ。それが俺たちの職業なんだ。

前進し続ける中で、ときには過去を振り返らなきゃならないこともある。初心を取り戻すために、過去を振り返らなきゃいけないんだ。

では、紹介しましょう、ガンズ・アンド・ローゼズ!