アクセル・ローズをボーカルに迎えたAC/DCのライブ、音楽誌・タブロイドが大絶賛

cyzowoman 2016.05

バンド結成時から変わらぬ縦ノリサウンドを提供し続けている伝説的ヘヴィメタル・バンドAC/DC。幼い頃にスコットランドからオーストラリアに移住してきたマルコム(63)とアンガス(61)のヤング兄弟が中心となり、1973年に結成したヘヴィメタル・バンドだ。

メンバーが入れ替わり、不安定だった初期時代を経て、75年にリリースしたセカンドアルバム『T.N.T.』が大ヒットしたものの、その5年後、バンドをブレイクに導いた伝説的ヴォーカリスト、ボン・スコットが急死。代わりを務めてほしいとオファーしたヴォーカリストたちからは次々と断られ、やっとブライアン・ジョンソン(68)を新ヴォーカリストとして迎えた。しかし、直後にリリースした6thアルバム『バック・イン・ブラック』に収録された「スリルに一撃」を繰り返し聞いていた高校生が相次いで自殺するという事件が起こり、非難されるように。85年になると、全米を震撼させた連続殺人鬼で悪魔崇拝者のリチャード・ラミレスが「AC/DCの曲にインスパイアされて殺しを行った」と供述したため、悪魔崇拝バンドという烙印を押されてしまった。

しかし、バンドを引っ張ってきたアンガスは、実はおとなしい性格。酒は一滴も飲まないというロッカーらしからぬ、真面目で地味な頭の良い男。常にクリアな頭で、バンドのピンチをくぐり抜けてきた。

2年前には、長年にわたりアルコール依存症に苦しんできたマルコムが認知症を発症し脱退、ドラマーのフィル・ラッド(61)が薬物所持と殺人教唆、脅迫罪で逮捕される不祥事を起こし脱退という悲劇に見舞われたが、フィルの代わりは80年代後半から90年代前半までドラムを担当していたクリス・スレイドが復帰する形で務め、マルコムの代わりはヤング兄弟の甥っ子スティーヴィー・ヤングが務めることに。

2014年末に通算15枚目(オーストラリアでは16枚目)となるアルバム『Rock or Bust』を無事リリースし、伝説的アルバム『T.N.T.』リリース40周年を迎えた昨年4月から『ロック・オア・バスト・ワールド・ツアー』をスタート。めっきり薄毛になったアンガスが汗だくになりながら、昔と変わらぬハイパーなパフォーマンスでステージを盛り上げ、観客は激しくヘッドバンギングしながらAC/DCの魅力に酔いしれた。

今後、しばらくは安定すると思われてきたAC/DCだが、今年3月、再び悲劇に襲われた。金切り声でシャウトするボーカル、ブライアンが重度の聴覚障害を患い、このままツアーを続けると聴力を完全に失うことになるとドクター・ストップがかかってしまったのだ。残りのツアー日程は順延され、誰がブライアンの代役を務めるのかが注目されるようになった。そして、同月末、バンドのメンバーたちと、ハードロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」のヴォーカル、アクセル・ローズが、同じリハーサルスタジオから出てくる姿がパパラッチされたため、「アクセルがAC/DCのフロントマンとして登場するのか!?」とファンを騒然とさせた。

アクセルといえば、ガンズ・アンド・ローゼズがメジャーデビューした当時、世界中の女性を虜にした美男子。しかし、時は流れ、50歳を越えた頃から激太りし、どすこい状態に。ミック・ジャガーやスティーヴン・タイラーら年老いたロッカーたちは痩せこけてはいるものの、味のあるしわくちゃ顔になっているのに対して、アクセルは、しわを取るための美容整形をしたのか、顔もパンパン。高音の歌声は辛うじて健在ではあるものの、ステージ上で暴れ回ったせいでケガが続き、多くのファンは落胆。頭に巻いているバンダナも禿げ隠しに違いない、とまで陰口を叩かれるようになってしまった。

しかし、今年1月に、ガンズ・アンド・ローゼズとして夏に北米ツアーを行うことが決定。アクセルも体重を減らし、パンパンだった顔も少しは落ち着き、4月上旬に開催したシークレット・ライブ、ウォーミングアップ・ギグ、そしてファン待望の米最大の野外フェス『コーチェラ・フェスティバル』でも大成功を収めた。同フェスティバルのステージに、アンガスがおなじみの学生服姿に帽子をかぶり、ゲスト・パフォーマーとして出演。ほぼ同時に、AC/DCは、アクセルを代打ヴォーカリストとして迎え、残りのツアーを行うことを発表した。

ウォーミングアップ・ギグで足を骨折したアクセルは、このところずっと車いすでステージに上がっているが、無駄な動きがないせいか、全盛期の頃のキレのよい高音シャウトに近づいていると評判。そんなアクセルが、AC/DCの名曲をどのように歌い上げるのか、大きな注目が集まった。

アクセルをフロントマンに迎えたAC/DCのコンサートを見たくないというファンに対しては、チケットの払い戻しはすると伝えていたり、アクセルが「AC/DCの曲の中には歌いにくいものもある」と認めていたりと、不安がるファンも少なくなかった。しかし、7日に、アクセルを迎えて初めて行われたポルトガル・リスボン公演では、アクセルはそんな不安を吹き飛ばすかのようなシャウトを披露し、大成功に終わった。英大手タブロイド紙「ザ・ガーディアン」は5つ星を与え、音楽誌「ローリンズ・ストーン」は「このツアーは今夏大ヒットするだろう」と高く評価。英ニュース専門チャンネル「Sky News」も「アクセル・ローズはバンドに対するリスペクトを持っているし、ぴったりの歌声を持っている」と、べた褒めした。

ネット上では、「アクセルはブライアンの代わりにはなれない」「これはAC/DCじゃない」といった批判的な声は根強くあるが、多くの音楽ファンは「素晴らしいコラボ」「リスペクトが生んだ夢の共演」と見ており、AC/DCの曲を歌うアクセルの動画にも、「キレキレの高音ヴォイスが戻った!」「最高!」だと大絶賛。「AC/DCは何度壁にぶち当たっても、見事に克服していく」と崇める声も上がっている。

株を上げたアクセルは、5月から6月にかけて行われるAC/DCツアーの残り12公演に参加した後、6月23日~8月22日のガンズ・アンド・ローゼズの北米ツアーを行う予定。あと1~2週間で骨折した足のギプスが外れ、「動き回るようになったら、息切れして声質が落ちるのではないか」「また派手に転倒するのではないか」など意地悪い声も上がっているが、波に乗っているアクセルのこと。音楽史に残るパフォーマンスをしてくれるに違いない。